陶製タイルという言葉から連想するのは、バスルームやトイレ、キッチンなどの水回りに防水のために張られている建築材料、アートとはかけ離れた存在、という意見が一般的かもしれません。
タイルの原形は正方形ではなく親指大の円錐形の焼き物で、紀元前3500年頃の古代オリエント、メソポタミア宮殿にまで遡ります。

世界最古といわれるタイルが発掘されたのは紀元前2650年頃の古代エジプトの遺跡からでした。ピラミッドの地下通廊の壁面を飾っていた淡い青緑色をした施釉タイルは、王の魂が現世に戻ってこられるようにとの願いを込めて三万枚余りも張り巡らされていたそうです。

美しさと機能性の高さから建材として発達したタイルはアラビア半島を起点とするイスラム文化圏へと拡がり、寺院や宮殿などの建築物に複雑極まりない小宇宙を展開していきました。
計算し尽くされた幾何学模様とアラベスクという理想化された植物模様の連なりによって織りなされる美に人々は度肝を抜かれたのです。

独自の発展を遂げたイスラム文化は、白釉に金属化合物を足して還元焼成させ金色や銅色に輝かせるラスター彩タイルや、素地に白釉をかけた上に筆で図案を描く白地多彩タイル、さまざまな色と形のタイル片を並べて繊細な模様を表現するモザイクタイルなどを次々と考案していきました。
完成までに時間を要するモザイクタイルの簡易製法として15世紀のトルコで生み出されたのがハフトランギー技法です。
多くの色という意味を持つこの技法は黒い顔料を油で溶いた絵の具で図案の輪郭線を描き、その内側に色釉薬を流し込むという画期的な方法で、スペインに伝えられタイル絵付けの原点となりました。
スペイン語でクエルダ･セカ、乾いた紐という意味のこの技法は南部アンダルシア地方で拡がりを見せ、この技法を用いたタイルの制作が盛んに行われ現在に至っています。

錫釉で表面を白化粧したタイルに手描き水彩を施すマジョルカ技法も人気がありますが、MAHALOではクエルダ･セカ技法を中心とした絵付け教室を開いています。
トレッシングペーパーに描いた図案をカーボン紙でタイルに写すのは簡単ですし、スポイトや筆で釉薬を流し込む作業は色鉛筆で塗り絵を完成させていくのとさほど変わりません。
絵付けに興味はあるけれど水彩画の筆使いが苦手な方や、絵を描くことに自信のない方でも作品を仕上げることが出来ます。

ここ数年の間にタイルの価値が再認識され、機能と装飾を兼ねあらゆる目的にかなうものとして頻繁に使用されるようになってきています。
修復されたロンドン地下鉄駅のタイル壁画には数々の現代アーティストの手による優れたタイル作品がたくさん描かれましたし、安価な大量生産により失なわれつつあった手仕事の美や職人による手作り、ものを作る歓びそのものを再び取り戻そうとする動きが世界的に拡がりつつあります。

ご自身の手描きタイルを暮らしに彩りを添えるアートのひとつとして生活空間に飾ってみませんか。
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スペイン直輸入の釉薬、顔料、豊富な参考図案の揃っているMAHALOアートタイル工房の絵付け教室は「わかりやすく楽しく丁寧に」を心掛け、個性豊かな作品作りのお手伝いをいたします。
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